立ち読み Shinkosha Book Web 新講社

人から「好かれる性格」の共通点
渋谷昌三
ISBN: 4-86081-063-5 C0095
発行年: 2005年1月5日
定価: 1,365円(税込)

◎「されて当然」という思い込みが、関係を壊してゆく
 お互いの距離感がしっかり固まっているはずの夫婦なのに別れてしまうことがあります。
 いままでの話の流れからすると、不思議なことに思えるかもしれませんが、熟年にかかわらず、恋人同士や夫婦間のトラブルの大半は、むしろ長いつき合いの中で距離感が固まり、いま現在の距離が見えなくなってしまったことが原因なのでしょう。
「相手は自分のことをすっかりわかってくれているはずだ」
「向こうは自分のやり方に満足していてくれているはず」
 そんな思い込みが、自分だけのものだったとしたら……。相手からすれば、そうではないというサインはずっと出していたというでしょう。つき合いが長いだけに、こちらが多少きつくいっても、ケンカをしても、それでも変わろうとしない。結局、本人が自分の思い込みだったと真剣に気づくのは、相手から別れ話を切り出されたときだった……。
 これは別れ話を切り出されたほうにとっても、切り出さずにいられなかったほうにとっても悲劇です。ふたりの距離感は合っていると思い込み、相手の愛情や献身が当然だと思い込んでしまうと、いつの間にか相手への思いやりやいたわりの気持ちは失われていくものです。夫婦間の不満やいさかいは、たいてい思いやりやいたわりの欠如から発しています。愛情とは思いやりやいたわりの気持ちで表されるものですから、それがなくなると夫婦の絆にヒビが入るのも当然といえば当然なのかもしれません。
 人間関係がむずかしいのは、互いの距離感が伸び縮みするからです。あまりよく知らない人には、なんとか相手との距離感をはかって、うまくやろうとしますが、一度その距離感を知ってしまった相手については、いつの間にかその作業を怠ってしまうことも多いようです。けれども、人がいくつになっても変化し、成長していくように、人間関係も目には見えなくても変わっていきます。いくら仲のよい夫婦でも互いの距離感がいつまでも同じ、とは限らないのです。
 夫婦間に限らず、「こうしてもらうのは当たり前」「誰々がするのは当然」という思い込みは危険です。その思い込みが思いやりを奪い、思いやりを失った人は、当然、自分の周りの人を失っていくのです。
◎「思いやる」のがヘタな人は、自ら機嫌を悪くする
 相手への「思いやり」、そのやり方がヘタな人がいます。
 どんなに相手を思いやっても、それが相手にきちんと通じなければ意味がないですね。実際、ひとりよがりの思いやりをやっている人をよく見かけます。
 仮にAさんとして話しますが、Aさんは恋人が最近、自分とばかりいるせいか窮屈そうにしていると感じていました。そこで、少し息抜きでもさせてあげようと「たまには友達と外へ飲みにでもいってきたら」と声をかけてあげます。そういってもらった彼も喜んで、遊びに出ていきました。
 ここまでは相手への思いやりとしてなんの問題もありません。ただ、問題はそのあとです。彼が外へ遊びに行っている間、つまらないAさんは部屋でぼうっとしています。すると時間ばかり気になって、ついには「十時には帰るっていったくせに、もう十五分も過ぎてる……」などとだんだん機嫌が悪くなります。
 彼が三十分遅れて上機嫌で帰ってきたとき、Aさんはすっかり不機嫌になっていました。彼としては「おかげで楽しい時間を過ごして、気分転換できたよ」とAさんにお礼をいおうとしていたのに、そのAさんから「約束の時間を破った!」となじられたら、どんな気分がするでしょうか。
 もちろん、Aさんの気持ちもわかります。約束の時間に遅れそうなのに、連絡も入れなかったAさんの彼も悪いでしょう。けれども、思いやりの面でいうと、Aさんは自分から申し出た「思いやり」を自分で台なしにしてしまったのです。
 本当に彼に息抜きをしてもらいたかったなら、彼が気をつかわないでいいように、自分もひとりで家で待っていることなどせずに「私も久しぶりに友人と会ってくるわ」といって出かければよかったのです。そのほうが自分も気が紛れるし、彼が三十分遅れたとしても、わが身を省みて「たまに友人とお酒を飲んだら、気が緩んで三十分くらい遅れるのもしょうがないわね」と思えるはずです。そして、結果的に彼には感謝されて……と、すべてが丸くおさまったのでしょう。
 それが上手な思いやりのし方だと思うのですが、いかがですか?
◎ 男と女は「距離」で、コミュニケーションする
「近寄りがたいところがある」という人よりも、もちろん「親しみが感じられる」という人のほうが好かれます。笑顔を向けてくれる、親身に話を聞いてくれる、言葉づかいがていねい……といろいろあるでしょうが、相手との「距離」も要因のひとつです。人と人との距離については前章でも述べましたが、ここではさらに具体的に記してみます。
 以前、男に、女の傍らに座って雑談してもらう実験をしたことがあります。そのとき、ひとりの男には、女から50センチの距離に、もうひとりの男には240センチ離れた位置関係で話をしてもらったのです。その結果、50センチの男のほうが、女性から好感を得られていることがわかりました。遠くに離れて話すと「よそよそしい」といった印象を与えてしまうのです。
 ただ、ここでむずかしいのは、あまり近づきすぎると今度は「なれなれしい」という印象を与えてしまうという点でしょう。
 相手に好印象を与える「ちょうどいい距離」というのは、自分と相手がどのような関係にあるか、また状況によって変わってきますが、その目安は次のとおりです。
 ■友人としての距離は……75センチから120センチ。
 片手を伸ばせば相手の体に軽く触れるくらいの距離です。それが友人と親しい会話を交わすときに、ちょうどいい距離。これ以上離れてしまうと、会話が事務的な感じになる。
 ■友人以上、恋人未満の距離は……45センチから75センチ。
「あなたとは、もう少し深いおつき合いしたい」という気持ちを、無言のうちに相手に伝える距離といえる。この距離から、もし相手が体を遠ざけたら、それは「そういう関係には、なりたくありません」という意思表示ともいえます。
 ■愛をたしかめ合うときの距離は……0センチから45センチ。
 相手の肌のぬくもりや、体のニオイが感じられるような距離が、恋人や夫婦が愛をたしかめ合うときの、ちょうどいい距離。これは他の人が入り込めない、ふたりだけの世界ができあがる距離ともいえるでしょう。
 男と女は言葉だけではなく、「距離」でコミュニケーションをしているのです。
◎ 異性の気持ちを動かす、「ほめ言葉」のツボ
 好かれる人は、人を「いい気分」にさせるのがうまい。だから「ほめ上手」の人は、好かれます。ほめられることほど、気分がいいことはありませんね。
 ところで、同じ「ほめる」にしてもコツがあります。女は一般的に容姿やファッションセンスのことをほめられると、うれしい。これは自分が日頃から「容姿やファッションセンス」のことに関心を持っているからです。また、その魅力を高めるためにエステに通ったりダイエットをしたり、ファッション雑誌に目を通したりと努力をしているからです。
 このように関心があること、努力していることを「ほめる」と、より効果的なのです。これが「自我関与」という心理法則です。
 男の場合でも、そうでしょう。男に「容姿やファッションセンス」のことほめても、あまりうれしくはない。あまり関心がありませんから。それよりも「男らしさ」や「仕事の有能さ」といったことが、ほめるツボになるのではないでしょうか。
 ところで同等、あるいは下の立場にいる人にほめられるよりも、目上の人にほめられるほうが、うれしく感じられるものです。そのほうが、より自尊心がくすぐられるからで、これを「自尊の理論」といいます。
 失恋をして気持ちが落ち込んでいるときに、また違った異性から「落ち込むことなんてないよ。君は魅力的な人だと、ぼくは思っているんだから」などとやさしい言葉をかけられると、つい心がフラフラと動かされてしまう。これも「自尊の理論」です。失恋してボロボロになっていた自尊心を、ふたたび元気づけてくれることで、「ほめ言葉」がより相手の心に強い効果を発揮するのです。
 また、相手があまり価値を置いていない相手からほめられるよりも、大切に思っている相手にほめられるほうが、ずっとうれしいともいえます。どうでもいいと思っている相手より、好きな相手からほめられるほうが、気持ちがはずむのです。
 あなたが「秘かに好きな人」をいくらほめても、ぜんぜんうれしそうにしてくれないとしたら、これは相手が、あなたに「価値を置いていない」証拠です。残念ですね。
 また違う相手を探すほうがいいのかもしれません。

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