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| まえがき 頭のいい人の<さかさま発想力>に学ぼう |
| 本書をお読みいただく前に、「さかさま発想力」とは何かについて、しっかりと理解していただきたいと思います。 発想というのは通常であれば誰でもがしていることです。いい発想か悪い発想か、役に立つ発想か立たない発想かは別にして、たいていの人が頭にパッと光が点灯することはあります。 いい発想、役に立つ発想をする人が、頭のいい人であることは間違いありません。頭がいいからいい発想をするのでなく、いい発想をするから頭がいいのです。 誰もがする発想の中から「なぜ、あの人の発想は際立っているのか?」ということですが、その人は、「見えないものを見る能力」を持ち、「既存の概念を打破する方法」を知っているのです。 通常の発想は誰にでもあるといいましたが、その人の場合、それをもう一回引っ繰り返す、あるいは逆立ちできる、ちょっとしたスイッチの切り替えができる頭の構造を持っているのです。 その人は雪原の中に隠された「塩」を発見できるのです。 雪原の中にある塩──これはただ、雪景色をぼーっと眺めていても、決して見つけることはできません。 たとえばこれが塩でなく、黒い砂なら、きっと遠くから見たり、雪を掻き分けることで、選別できるでしょう。 もし白い砂なら、黒い砂よりすこしむずかしくなります。見ただけではわからないので、雪の固まりをお湯に溶かしてみるといった工夫が必要です。 でも、塩ならもっとむずかしいでしょう。お湯に溶かしてもきっと雪といっしょに塩も溶けてしまうからです。 では、どうすれば雪原の中から塩を見つけることができるのか。 舐めてみる──効率は悪いかもしれませんが、たしかにその手はあります。 これは本書の中にある「五感」を使おうという発想法に通じます。でも、これはまだ発想法としては初級です。 だって、塩を探すために舐めたわけで、答えがあって、その方法を思いついただけです。 これでは塩を探すことができましたが、発見ではありません。 もし甘い味がしたとしたら、これは塩ではないとはじかれてしまうかもしれません。 塩を探すという先入観によって、砂糖という大発見を見過ごしてしまうかもしれないのです。 現代人は、答え探しはたしかに上手です。 日本の算数の問題は、 2+3=□です。 海外の算数では、 □+□=5です。 答えを見つけることより、答えがたくさんあることを教えます。 雪を舐めてみようという好奇心によって、雪原の中の塩を見つけることができるし、砂糖だって、小麦粉だって、発見できることこそ、すばらしいのです。 いちばん大切なことは、雪景色を見て、そこに何かがあるかもしれない、と思うあなたの心なのです。 それを「さかさま発想」といいます。 それはむずかしそうでいて、じつは案外かんたんなことです。先入観を取っ払うことであり、思い込みで判断する前に「ちょっと待てよ」と考えることです。白は白でもあの「白」はちょっと違うとわかってしまうのです。 その力を「盲点力」ともいいます。 本書は、そのためのさまざまな事例集と考えていただいてさしつかえありません。 要は「頭のいい人は、どこを見ているのか」ということです。 そして、本書は、あなたの目のウロコを落とすための本です。 本書を読み終わったとき、あなたの周りに違う景色が広がっている──そう、雪原の中に置かれた「塩」が見える──ことを信じて話を進めていきましょう。 「頭のいい人は、いったいどこに視点を置いているのか?」 ご参考にしていただければ幸いです。 |
| 第1章 雪景色の中で「塩」が見える人は逆立ちできる人 |
| ●逆立ちする人は金持ちになれる |
| <さかさま発想力>を磨くいちばんかんたんな方法を紹介しましょう。 それは逆立ちです。 上半身と下半身が物理的な逆転をする、逆立ちこそいちばんかんたんで、しかももっとも効果のある<さかさま発想力>の鍛錬法です。 逆立ちは「ヨーガの王様」と呼ばれています。 ヨーガは、日本では健康法のように思われていますが、呼吸法や瞑想など、非常に発想を磨く効果が知られています。 そのヨーガの行法の一つが、逆立ちなのです。 逆立ちをすることで、あなたは「発想の転換」とは何かを実感できるはずです。 発想の転換という言葉を、デスクに座って何回唱えても、それを実感することはむずかしいでしょう。 でも、逆立ちをすれば、あなたは発想の転換を具体的にイメージすることができるはずです。 きれいに逆立ちをする必要はありません。壁に足をついて、頭をつけた三点倒立でかまいません。 どうですか。逆立ちをした気分は? まさに<さかさま発想力>そのもののはずです。 もちろん本書は、ヨーガや体操の本ではありません。逆立ちを考え方に応用してみましょう。 課題をもらったとき、逆立ちして考えてみることです。 目的と手段を入れ替えてみる。目的だったものが、じつは手段になります。 リンスインシャンプーというヒット商品がありました。 髪を洗ったあと、ほとんどの人がリンスをします。それなら、別々にするのではなく、リンス効果のあるシャンプーをつくればいい、という発想です。 でもこれは<さかさま発想力>ではありません。 ここでリンス効果とシャンプー効果について、その目的と手段を変えてみましょう。逆にしてみるのです。 汚れを落とすことを目的にシャンプーをする、そのとき髪のしっとり感を出すために、コンディショナーというかリンスをしていたわけです。 でも、リンスを目的にしたらどうなるでしょうか? 髪をきれいにするのは、リンスのための手段だと考えられないでしょうか。 こうした目的と手段の逆立ちから生まれたのが、「シャンプー効果のあるリンス」です。 これは毎日、髪を洗う女性に大ヒットとなりました。 若い女性は、汚れを落とすために髪を洗っていたのではなく、髪をしっとりさせるというリンス効果を目的にしていたわけです。 これこそ、逆立ちの発想から生まれたヒット商品です。雪原の中の「塩」を探すというのはこういうことなのです。 さあ、逆立ちをしながらいろいろなものを逆転させてみましょう。きっと画期的なアイデアが生まれるはずですよ。 |
| ●コンビニエンスストアに行けば、あなたの盲点が見える |
| コンビニエンスストアと旅行グッズ商品売り場をぜひ訪ねてください。 きっと面白い発見があるはずです。 コンビニエンスストアは便利さを象徴しているものの一つです。 二十四時間営業∞効率のよい品ぞろえ≠ネどが、コンビニエンスストア(これ以降はコンビニ)の特徴です。 カップラーメンなどのインスタント食品、パンやお弁当、おにぎりにデザート、サラダに野菜に漬物などの食べ物関係から、黒のネクタイ、下着にタオル、さらには生理用品やアメニティグッズ各種、祝儀袋、雑誌に電球まで、現代社会を生きるうえで必要と思われるものがそろっています。 逆にいえば、現代社会になくては困るものばかりです。 コンビニを観察することで、わたしたちが「便利さ」の中で無視してきたもの、つまり不便が見えてきませんか。便利の中に不便を見つける、これこそ<さかさま発想力>です。 コンビニは、不必要なものがない空間です。 別ないい方をすれば、ここにないものこそ、<さかさま発想力>を磨く最高の空間といえるのではないでしょうか。コンビニにないものが、わたしたちが探そうという「不便さ」です。そして、「塩」なのです。 店内を見渡すと、ほとんどのモノがそろっています。ここでないものを探せるか、そんな充実ぶりです。 ないものはもちろんあります。マンガや雑誌はありますが、活字の本、辞書や事典はありません。現代人に、辞書や事典はいらないということなのでしょうか。 自転車やかばんなど、比較的大きなものはありません。 おもちゃや布団、電気製品もありません。 他にもきっと、気づかないものがあるはずです。 コンビニにないものを見つけることこそ、ヒット商品になるものを見つけることかもしれません。 もう一つ、便利といえば忘れることができないのが、旅行商品を扱っている店です。 旅行という制約の中で、いかに快適に、不便なく過ごすか。そのための商品がつめ込まれている店です。 まさに不自由を工夫した商品の宝庫です。 しかもただ便利というのではなく、旅行という非日常な空間なのに、そこには日常生活が凝縮されてもいます。旅行グッズを見ていると、自分たちのふだんの生活の過剰さもわかります。 現代社会に不可欠なものを象徴したコンビニ、不便を克服するために工夫された旅行グッズ。 この二つを観察することは、きっと商品づくりや発明のヒントになるはずです。 |
| 第2章 周りを見渡せ!日常生活の中で<さかさま発想力>を鍛える |
| ●レンタルビデオショップで、いちばん上の右はしのビデオを借りる人 |
| 友人の話です。 彼は発想に行きづまると、映画を見て、本を読みます。 別にそれは新しいことではないと思われるでしょう。たしかにその通りです。誰もが実行している当たり前のことです。 あなたが発想を得ようと思い、書店やレンタルビデオショップに行ったとしましょう。 そこであなたは、本の目次や帯、ビデオやDVDなら、そのパッケージに書かれた解説文などからの「情報」を得て、チョイスしているはずです。 あなたは発想のヒントになればと、本やDVDを選んでいるつもりでしょうが、それではあなたの盲点を超えていません。 著者名や監督、目次や解説文は、あなたに先入観という「盲点」を植えつけています。知らない間に自分がよくなじんでいる世界に入って行ってしまっています。情報があなたの<さかさま発想力>の足かせになっているわけです。まだまだ雪原は雪原でしかありません。 せっかく発想の転換をねらって映画を見よう、本を読もうとしているのに、あなたは自分の盲点の中で行動しているにすぎないのです。 では、どうすればいいのでしょうか。 冒頭の友人は、本屋やレンタルビデオショップに行く前に、買う本や借りるビデオをすでに決めています。 「いちばん右奥の、上から3段目の棚の右から3番目のビデオを借りるぞ」 こうすることで、彼は自分の盲点を取り去っているわけです。 この出合いは、偶然なものですから、監督も俳優も知らない、しかも自分がふだん見ないジャンルの映画に出合うことになります。 情報を拒否して、偶然の出合いを求める。これこそ<さかさま発想力>です。 もちろん失敗もあります。しかし、思わぬ収穫もあります。 本もまったく同じです。ふだん読まない女性エッセイストの本に出合ったり、まったく知らない作家に出会ったりすることがあるわけです。 わたしたちは、映画評や書評などの情報を、なぜ事前に手に入れようとするかといえば、それは効率を求めているからです。 できるだけ、損をしないで、時間のムダをなくしていい作品に出合いたいと思っているわけです。 何かヒントがほしいと思ったとき、あなたの経験の延長線上や、情報という先入観の中からはなかなか生まれません。 自ら偶然の出合いを演出する。真っ白な世界の中から「塩」を探したいのなら、この方法はおすすめです。 |
| 第4章 雪原の中に「塩」を発見する編集能力とは何か |
| ●大きいものは小さく、小さいものは大きくする |
| 言葉の組み合わせが発想のヒントになることを紹介しました。組み合わせは現実的なものでも当てはまります。 たとえば、スプーンとフォークをいっしょにした商品があります。 これはアウトドアなどで、たくさんの荷物を持っていけないとき、2つの機能をいっしょにすることで生まれた商品です。 これは「食べる」という同じカテゴリーの道具でしたが、違うカテゴリーのものをくっつけることで思わぬ商品を開発することができるはずです。わたしはこれを「くっつけ発想」と呼んでいます。 たとえば、携帯電話にカメラ。誰が考えたのか知りませんが、「くっつけ発想」によって生まれた商品だと思います。 こんな面白いアイデアの商品もありました。ダイニングテーブルがチェック柄になっているのですが、ホワイトボードの素材になっていて、○と×を書き込めば、五目並べなどの遊びができるのです。 これなども、「テーブルに落書きをしてはいけない」と決めつけるのではなく、落書きをしたいなら、落書きができる素材をくっつけてみようという発想です。 「くっつけ発想」の変形が、「大きいものを小さくしてみる、小さいものを大きくしてみる」という発想法です。 これこそ、先入観という盲点の壁を破る作業です。 たとえば大きなものの代表といえばゾウ。小さなゾウをかわいくデザインすれば、面白いグッズができるわけです。 実際SD(スーパー・デフォルメ)といわれるデザインは、大きなものを小さくするという発想から生まれたものだそうです。 デザイン以外でも、たとえばバスを小さくしてみる。実際に寸づまりのバスが郊外を走っています。あるいはバスのドアの開き方をコンパクトカーに活かしてみるという発想です。 最近、発売されたトヨタの「ポルテ」という車があります。 これはコンパクトなボディに、高級車のような居住空間をつくった車です。しかもドアは、後ろの人も乗り降りできるほど大きなスライドドアです。 後部座席に乗る子どもや高齢者のドアの開け閉めは心配なものです。それなら大きなドアにして、後部座席のドアもいっぺんに開けてしまおうという発想です。 逆に小さいものを大きくしてみましょう。 大きなウォークマンというのもいいかもしれません。大きいというのはスイッチ類が大きいわけで、携帯電話などは、高齢者向けに文字やスイッチ類を大きくしているものも出ています。 ウォークマンを大きくしたり、すこし重くしたりすることで、忘れなくなったり、高齢者が外で聞きやすかったりするものを開発できるかもしれません。 なんでも軽く小さくすることで、高齢者には使いづらかったりする場合があるからです。 |
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