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「今日がダメでも、明日うまくいく人」の考え方
和田秀樹
ISBN:4-86081-073-2 C0095
発行年: 2005年4月11日
定価: 1,365円(税込)

●まえがき
<人生、悲観的になっても何も始まらない>
「昨日より今日、今日より明日がよくなれば、後半生には素晴らしい日々が待っている」
 わたしはこういう考え方が好きです。
 たとえうまくいかない日があっても、「明日はうまくいく」と明るく信じる人が、結局は幸せな人生を過ごせるように思うからです。楽観的かもしれませんが、悲観的な人生より前向きなのはたしかです。80年の人生が、尻上がりに幸せになっていくのでしたら理想的と言えるでしょう。
 もちろん、これは誰でも望むことです。
 どんなに悲観的な人でも、「明日はうまくいく」と信じたいし、幸せな後半生を迎えたいと思うはずです。
 にもかかわらず悲観的になってしまうのには、二つの理由が考えられます。
 一つはまず、いまの自分にこれといった「好材料」が見当たらないこと。
 もう一つは、これまでの人生がいつも、「明日こそ」の繰り返しだったことです。「明日こそ」「今度こそ」と思い続けても、結局、昨日と同じような一日を過ごしてしまい、自分が尻上がりによくなっていくことを実感できなかったからではないでしょうか。
 いまの自分にこれといった長所や特技や資格もなく、ずっと不本意な毎日を過ごしてきたとすれば、これからの人生に悲観的になるのも無理がないかもしれません。
 しかし、たとえそうであっても「明日はうまくいく」と明るく信じてください。今日までうまくいかなかったとしても、そんなことは済んだことです。
 明日はいままでとは違う新しい一日。「きっとうまくいく」という楽観的な気持ちをまず取り戻してください。
 悲観的になったところで、何も始まらないのです。
 それが、この本をこれから読んでくださる読者の皆さんへの、わたしからの最初のメッセージになります。
<ダメならダメでそのとき考えればいい>
 わたしは人とつき合うときに、その人の長所やその人とつき合うことのメリットだけを考えるようにしています。いいところがある、いいことがありそうだと思うからつき合うのです。
 もし欠点が見つかったらどうするか。
 あるいはつき合ってみて困ることがあったらどうするか。
 それはそのとき考えればいいのです。
 自分自身に対しても同じです。
 わたしはこういう人間ですから批判を受けることはいくらでもあります。わたし自身、自分の欠点は欠点として承知しています。
 でも、人間関係はおたがいの長所と長所のつき合いです。長くつき合えば短所もそのうちわかってきますが、長所がなければそもそも人間関係は始まりません。相手の長所に注目し、自分の長所に気がつく人が、周囲に気持ちのいい関係を築いていけるのではないでしょうか。
 自分の長所に気がつくというのは、楽観的な人のほうが得意です。おみくじを引いて大凶と出ても、「いまが最悪ならこれからよくなる一方だ」と考える人が、ものごとの両面のいいほうだけに注目できるからです。
「今日はダメでも明日はうまくいく」という考え方も同じです。「世の中捨てたもんじゃない」という楽観的な立場に立てば、ダメな一日がいつまでも続くはずはないと気楽な気持ちを取り戻すことができるのです。
 ですからまず、自分の長所に気づき、それをどう伸ばすかを考えてください。
 ゴルフでも囲碁・将棋でも、プロは自分の長所を知り尽くし、それに磨きをかけます。
 アマは逆に、自分の短所を一所懸命克服しようとしますが、どんなに短所がなくなっても長所を磨いたプロには勝てません。ベストアマではプロに勝てないのです。
<自分のダメな部分をプラスに転じる考え方>
 楽観的になること。
 自分の持っているものを見直し、長所に気づくこと。
 この二つのことさえ忘れなければ、これからこの本でわたしが書くことも受け入れてもらいやすいかなと思います。
 というのは、けっこう厳しい指摘も混じるからです。
 それは仕方のないことで、ただ楽観的なだけでは「明日うまくいく」とは限りません。
 いままでのやり方をそのまま続けても「明日うまくいく」とは限りません。
 少なくとも、そこに甘えや言い訳が入り込んでいる限り、「今日のダメ」は明日も繰り返されるでしょう。「そのうちいつか」と思い続けてきた毎日が、いつまでも続けていくでしょう。
 そのとき、自分のダメな部分に真っ直ぐ目を向けるのはつらいものがありますから、どうしても言い訳が入り込みます。それが大きな間違いではないでしょうか。長所や、すでに持ち備えているものがあるのですから、もっと悠然と構えていいはずなのです。
 たとえばいまの自分が感じている不安を、ごまかさずに正面から見据えてみる。自信のなさの理由を見据えてみる。
 それを乗り越えるために、何をすればいいのか考えてみる。
 答はかならず出るはずです。あとは悲観的にならずに、自分にはそれを乗り越える力があるのだと思うことです。
 この本では、どんな人の心にも忍び込みやすい自分への甘えや言い訳に打ち克つ方法についても考えてみます。いわば自分に自信を取り戻し、迷いを吹き飛ばす方法です。それが身についたときに、仕事や勉強だけでなく、対人関係にも迷いが消えるはずです。
 ただし奇手、妙手はありません。どれもきわめて正攻法になってきます。
 なぜなら、はっきりした危機感を持つということがスタートになるからです。いまのダメな状態から抜け出すためには、目をそらさずに危機感に立ち向かうしかないからです。
 そして少しも恐れることはありません。誰にでもいいところ、悪いところがあります。
自分のダメな部分をはっきり認めることは、「明日うまくいく」ためのステップにすぎないのです。
 これは決して短所にとらわれることではありません。そのステップを乗り越えるたびに、危機感が消えていくからです。いままでの自分が解決を先延ばししたり、逃げてばかりいたことがちっぽけなことに思えてくるのではないでしょうか。
「今日はダメだった」
 こういう気持ちは誰でも持ちます。少しも恥ずかしいことではありません。
「でも明日はきっとうまくいく」
 この本を読んで、何の不安もなくそう思える人になってください。
第1章 今日のきみの「そこがダメ」
●気づかないうちに入り込む「言い訳」
 中身のギッシリつまった一日、たとえば会議や報告や面談といった用事をこなしながら自分の仕事も精力的に片づけた一日は、退社時間が来れば「今日は仕事したなあ」と思います。一日の仕事量としては十分だったと納得しますし、この調子でバリバリ働けば怖いものなしの気分になります。
 そういう一日が、はたして一ヶ月にどれぐらいあるでしょうか。「毎日がそうだ」というのでしたら何の問題もありませんが、大部分の人はおそらく月の半分かそれ以下の日数しかないのではと思います。少なくとも、いまの自分の仕事や勉強のやり方に満足していない読者のみなさんは、一ヶ月の大半が不完全燃焼の日々ではないかと思うのです。
 ただし、いまここでそのことを取り上げるつもりはありません。誰でも気がついていることだし、「わかっていても変わらない自分」がいるのです。この行きづまりをどう切り開くかが今回のテーマなのです。
 そこでまず、うまくいった日を思い出してください。
 時間を無駄なく使い、予定した以上の仕事をこなし、十分な満足感が得られた日はどんな日だったのか?
 誰でも思い当たるのは、追い込み状態のときです。納期や締切が迫っている、どういう理由であれ遅れるわけにはいかないといった切迫状況のときです。
 次に思い当たるのは、気分が晴れ晴れしているときです。いいことがあったり、楽しみな予定が控えていたり、抱え込んでいたトラブルがすっきり解決して前向きな気持ちになっているときです。
 この二つに共通するのは何だと思いますか?
「言い訳」が入り込めないということです。前者はもはや言い訳の許されない状況ですし、後者はそもそも言い訳を必要としません。つまり、外からのものであれ、自分からのものであれ、言い訳が入り込まないときには誰でも意外な集中力を発揮していることになります。ダメな一日とは、「言い訳」を許している一日のことなのです。
 人間は誰でも自分が可愛いし、自分を否定したくありません。自分のダメなところには気づかないふりをしたり、甘く採点したくなったりするものです。
 その意味で言い訳が入り込む余地はいくらでもあるのですが、満足できる一日を考えた場合には逆の答が出てきます。言い訳を拒んだときにこそ、自分に自信が生まれてくるのではないでしょうか。
●ダメな日がどれほど多いか気づいてみよう
 仕事や勉強が予定通りに進み、その一日に充実感を持ったときには、自分の可能性がふくらんでくるのを感じます。
 これは実感として得られるものですから、ただの空想や期待ではありません。
 たとえばいつもは四日かかっている仕事が一日で半分仕上がったとします。
 するとほんとうは二日でできるんだと気がつきます。単純に計算すれば、手いっぱいだと思っていた仕事を量的に倍増しても大丈夫なんだと気がつくのです。
 ところがたいていの場合、四日で仕上げる仕事はやはり四日かかってしまいます。最初の一日で半分仕上げても、残り半分を仕上げるのに四日費やすことになるからです。
 その結果、せっかくふくらみかけた自分の可能性がもとのサイズにしぼんでしまいます。
「やっぱりダメか」と諦めてしまうのです。
 これはものすごくもったいないことだと思いませんか。
 なぜなら、うまくいった一日とダメな三日があっただけのことなのに、ダメな三日に自分を合わせてしまうからです。うまくいった一日の経験や記憶は少しも活かされず、ダメな日の気分だけが残されているからです。その気分のままに自分の可能性や能力を判断してしまうから、いいイメージが描けないのです。
「うまくいった一日はたまたまうまくいっただけだ。平均すれば四日の仕事に四日かかるのは当たり前なんだ」
 こういう言い訳はじつに巧妙な言い訳で、いつの間にかダメな三日を正当化していることになります。ふだんより効率の落ちた、はっきりとダメな日だったにもかかわらず(二日の仕事に三日かけたのですから)、それが当たり前と言い聞かせているからです。
 すると一ヶ月や一年といった長い期間でも、すべて「可もなく不可もない」日々になってしまいます。そこそこがんばった日々であり、そこそこ怠けた日々になってしまうのです。これではいつまでたっても立ち直りのきっかけがつかめないでしょう。
 そこで、そういった悪循環から抜け出すためにまず気がついてほしいこと、認めてほしいことがあります。それは、今日までの日々にはほんの少しのうまくいった日々と、たくさんのダメな日々があったということです。  うまくいった日々があるから、何とか現状維持ができたのでしょう。もし全部がダメな日々だったら、仕事の上では信頼を失い、学習意欲も完全に失っていたはずです。
 しかし、たくさんのダメな日々があったから、たまにどんなにがんばっても現状維持がせいぜいだったのです。いまの自分に不満があるのも、すべて、たくさんのダメな日々を見過ごしてきたからではないでしょうか。
 したがって、これからの毎日に少しでもダメな日々を減らしていけば、自分に対する不満もみるみる消えていくはずなのです。どんなにうまくいった日があっても、ダメな日が足を引っ張っていたのですから、要はそのダメな日を減らせばいいのです。
 そのためにも、ふだんの日々にどれだけダメな一日が入り込んでいたかを認めるべきです。あまり認めたくないかもしれませんが、言い訳しないと決めれば認めるしかありません。そして、そこから始まるものがかならずあると思ってください。
●自分から動かない人はリズムに乗れない
 ダメな一日は「待ち」の気持ちになっていないでしょうか。
「先方から言い出してきたら対応しよう」
「催促されたら片づければいい」
 そんな調子で目先の用件もペンディングにしておくことが多くないでしょうか。
 じつはこういう態度が、いつまでもスタートを遅らせる原因の一つになっているのです。
 仕事にはリズムがあります。一つ一つ片づけていくうちに、リズムに乗ってきます。そうなれば集中力も出てきますから、それほど自分を追い込まなくても楽な気持ちで仕事をこなしていけます。時間がたつのも速いし、仕事の進み具合も速くなるのです。
 しかし「待ち」の気持ちになってしまうと、リズムに乗れません。自分から動かないのですから、仕事の流れが滞ってしまうのです。一つのことをダラダラと続けて集中力がなくなったり、あるいは他人にペースを乱されたりします。
 そうなるくらいなら、自分からどんどん動いたほうがいいのです。雑用というのは、仕事のリズムを壊すように思われがちですが、自分から次々に片づけていけばそれによって仕事に取りかかるときにリズムが出てくるのです。
 つまり、どうせ片づけなければいけない雑用なのですから、スタート前のウォーミングアップのつもりで自分から動いてみることです。取りかかればどれもさほど面倒ではないし、頭を使うとういほどでもありません。確認や連絡はすべて電話やメールで済むことですし、それ以外の雑用もすべて指先や体を使ってのウォーミングアップと思えばいいのです。
 苦手な上司に気の重い報告がある場合でも、雑用を片づけついでに「エイッ」と席を立ってしまいましょう。たっぷりの小言や厭味が待ち構えていても、自分のほうから上司の机に出向いた瞬間に気持ちは軽くなっています。理不尽な言いがかりをつけられたら「一丁、やってやるか」ぐらいの気持ちで向き合えばいいのです。
 そういうフットワークの軽さが、次第に気持ちを軽くしてくれ、リズムを生み出してくれます。要するに、すべて仕事の好スタートを切るためのウォーミングアップなのですから、自分から動いてテンションを高めていくことです。
 ところでわたしがこういうことを書くと、「それができれば苦労はしない」という声が読者の方から届くことがあります。でもいま書いているのは、「雑用ぐらい自分から動いて片づけよう」というすごく基本的なことです。ダメな一日には、その基本的なことからさえ逃げ回っている場合が多いのです。

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