立ち読み Shinkosha Book Web 新講社

子どもが輝く「金のことば」
多湖 輝
ISBN:4-86081-074-0 C0094
発行年: 2005年4月8日
定価: 1,365円(税込)

序章 子どもにとって何より大切なものがある
◎「金のことば」を素直に信じたい
 わたしたち大人も、いままでにたくさんのことばのプレゼントをもらってきました。
 子どものころは主に両親から、少し成長してくると先生や友人からも、社会に出るようになると上司や年上の人たちからも、おりにふれて励まされたり元気づけられたりしてきました。
 その中には、いくつかの忘れられない「金のことば」があるはずです。あのときの親友の一言で立ち直ることができたとか、先生の温かい励ましで最後まで志望校を諦めずに勉強できたとか、そういう宝もののようなことばです。
 ある程度、知識や経験が備わった年代になっても、わたしたちは周囲の人のことばに勇気づけられたり、希望を取り戻すことがあるのです。知識も経験も乏しい子どもにとって、お母さんやお父さんがいつも語りかけてくれる「ことば」が、どれほど大きな影響を与えてくれるか想像することはできると思います。
 よく言われることですが、子どもは褒めれば伸びます。励ませばそれに応えようとします。けなされたり否定されたりするとたちまち縮んでしまいますが、褒められることで自信を持ち、励まされることで力を発揮するようになります。
 大人はそれほど単純ではありません。自身をなくしているときには褒められても素直に喜べないし、励まされてもプレッシャーに感じるだけです。
 つまり大人は、さまざまな理由から周囲の「金のことば」に対してガードが固くなっています。よくも悪くも人格ができあがっているのです。
 ところが子どもは、親や周囲のことばをまともに吸い取って生きています。バランスの取れた食事が子どもたちの体をどんどん大きく、たくましくしてくように、「金のことば」は子どもたちの心をどんどん大きく、たくましくしてくように、「金のことば」は子どもたちの心をどんどん成長させていくのです。
 けれども、偏った食事は子どもたちの体の成長を妨げます。
「ことば」も同じで、悪いことば、子どもの心の成長を妨げるようなことばがあります。親や周囲が不用意に口にした一言で、子どもが傷ついたり自信をなくしたりすることがあります。
 大人が考える以上に、子どもは「ことば」に心を揺り動かされてしまうのです。
 ですから、お母さんやお父さんは子どもに何気なく声をかけているときの自分の「ことば」に、もっと敏感になってください。いまよりもう少し意識して、子どもの心を健やかに成長させることばを選んでください。
 たったそれだけのことで、子どもは輝きを取り戻します。不安に包まれたり自信をなくしかけたときでも、お母さんやお父さんの「金のことば」がすぐに助けてくれるからです。わが子にはいつも輝いてほしいと願うのでしたら、ぜひ、そんな「金のことば」を惜しむことなく与え続けてください。
 この本では、わたし自身の経験や、いままでに会った大勢のお母さん、お父さんたちのお話をもとに、子どもの心を輝かせてくれる「ことば」を集めてみました。読んでもらえればわかると思いますが、「金のことば」は少しも特別なことばではありません。大人になっても、自分を落ち着かせたいときや、励ましたいときにふと口をついて出てくることばです。お母さんやお父さんならきっと思い当たる「ことば」ばかりです。
 いままでにもきっと、声に出して子どもに語りかけたことも数え切れないぐらいあったはずです。
 でも、いつごろからか、めったに口にしなくなった「金のことば」ではないでしょうか。わが子に輝きがないなと感じ始めたのは、もしかするとそのころなのかもしれません。どうかもう一度、「金のことば」の力を信じてみてください。
第1章 「正しいこと」を教えるワサビの効いた14のことば
(2)「同じことされたら、どう思うかな?」
  −自分のことばや態度が、相手をどんな気持ちにさせるか
    他人の痛みや悲しみを想像できる子どもであってほしい−
 そのことばや行動が正しいか、正しくないか。
 このことを子どもに正確に教えるのはとても難しいはずです。とくに小さい子どもほど、「自分は悪くない」と言い張ります。友だちに意地悪したり、仲間外れにしたり。子どもには子どもの言い分があるでしょう。
 でもそれは、自分や自分たちの立場だけにこだわった言い分です。自分たちのことばや行動が、相手をどんな気持ちにさせるか。どんな痛みや悲しみを与えるか。
 そのことを少しでも想像できる子どもなら、やっていいことと悪いことの基本的な判断がつくはずです。同じことを自分がされたらどんな気持ちになるか。立ち止まってそう考えてみることは、決してマイナスにはなりません。
(5)「みんなで決めたことなら守ろうよ」
  −ルールはみんなが平等に生きていくための約束ごと
    不満はあってもそれに従うのが大切だと教えよう−
 子どもが成長していくと、最初にぶつかる壁がルールです。学校や教室でのルール、家庭内でのルール、友だち同士で遊ぶときのルール、さらには社会のルールがあります。
 そういうルールをなぜ守らなければいけないのか、子どもはときどき忘れてしまいます。ルールなんか無視したほうが自由に動けるし、好きなことができるからです。
 それから周囲にルールを破る子どもがいます。それを見ると、「○○ちゃんもやってるんだから」ちょっとぐらいいいかなと考えてしまいます。友だちもやっているからというのは、子どもがよく使う言い訳です。
 でもルールを守ることで、みんなが楽しく遊ぶことができます。平等というのはみんなで少しずつ我慢を分け合うことでもあるのです。その我慢の大切さを気づかせてください。
(11)「一所懸命の人を笑ってはいけません」
  −誰にでも得意なことと苦手なことがあるんだと、教えましょう
    不恰好でも失敗しても一所懸命の人は美しいと−
 小学生になると、勉強やスポーツにそれぞれ得意・不得意の分野が出てきます。
 得意なことや自分にできることは、自信もあるので積極的に発表したりみんなの中心になったりします。不得意なことには消極的になったり、逃げ回ったりしたくなります。
 でもこのままでは、不得意なことはどんどん不得意になるし、イヤになってきます。
 もっと困るのは、何が格好よくて何が格好悪いかという見方がゆがんでくることです。
 たとえば運動会の徒競走でビリの子は格好悪いでしょうか。
 一所懸命走って、それでもみんなに遅れている子が、歯を食いしばって追いかけたり、足がもつれて転びそうになるのは格好悪いのでしょうか。
 逆にうんと足の速い子が、最後は余裕の笑顔を見せて悠々とゴールするのは格好いいのでしょうか。  自分の不得意なことから逃げ回ろうとする気持ちは、一所懸命になってもみんなと同じにできないことが格好悪いと思うからです。「きっと笑われるんだろうな」と思うからです。
 もしそういう考え方が身についてしまうと、苦手なことほど手を抜くようになってしまいます。頑張ってもできないことにはチャランポランな態度で向かうようになります。
 でもそれは間違いですね。
 世の中にはさまざまなハンディキャップを抱えている人がいます。でもそういった人たちは、時間がかかっても不恰好でもみんなと同じことをしたいと一所懸命に立ち向かいます。その姿を笑うのは、人間としてとても恥ずかしいことです。
 だから、友だちの失敗を笑ってはいけないのです。上手にできないことは少しも恥ずかしいことではありません。
 逃げたりごまかしたりするほうがもっと恥ずかしい。いちばん尊いのは、苦手なことにでも一所懸命に取り組む姿です。
第2章 小さなときから、子どもの「勇気を育てる」14のことば
(1)「やってみようか」
  −いつでもどこでも、思いついたことを実行に移す子どもにしたい
    平凡なことばに子どもの背中をポンと押す力が宿っている−
 「やっちゃダメ」とか「危ない」ということばは、たぶん親の本心でしょう。
 ケガでもされたら大変だ、子どもはまだ判断力が備わっていない、だから危なっかしいことはやめさせるに限ると考えます。
 でも、「やってみようか」ということばも親の本心のはずです。
「やってみよう。できるかどうか、やってみなくちゃわからないんだから」と応援する気持ちです。やってみて無理なら諦めればいい。ほんの少し力が足りないなら手を貸してあげよう。そういった親の気持ちを、簡潔に、気軽に表わしているのがこのことばです。
 ですから、どんな場面でも、子どもが興味を持ったことすべてに「やってみようか」と声をかけてください。ためらいから自由になったとき、勇気が育ってくるはずです。
第3章 子どもの「気持ちが明るくなる」14のことば
(5)「よかったね」
  −どんなときでも、この一言が返ってくると明るい気持ちになります
    自分の幸福感をわかってもらうともっと嬉しくなる−
 仲よしの友だちとケンカして、ずっと元気のなかった子どもが学校から帰るなり、嬉しそうにお母さんに報告しました。
「○○ちゃんとね、日曜日に遊ぶ約束したよ」
 そういって仲直りしたことを教えてくれたのです。
 台所に立っていたお母さんは、ふり向いて大きな声で「よかったねえ」と一言。
 そのことばが嬉しくて、子どもはその日の出来事を細かく話してくれます。
 お母さんは黙って聞きながら、最後にまた、「よかったねえ」と一言。子どももポツンと、「よかった!」
 このお母さんが口にしたのは「よかったねえ」ということばだけですが、そのことばが子どもの胸の中で大きく弾けたみたいです。
 誰かにさり気なくかけてもらったことばの中で、「よかったね」という一言ぐらい嬉しいものはありません。いいことがあって思わず打ち明けてしまったとき、相手の人が自分のことのように喜んでくれれば嬉しさは何倍にもふくらむからです。
「よかったね」なんてじつに簡単なことばです。
 でも、こんな簡単なことばで、子どもの気持ちが一気に明るくなり、表情も輝いてくることを忘れないでください。
 どんなことでもいいのです。友だちとのこと、その日ラッキーだったこと、悩みや心配事が片づいたこと……とにかく子どもがホッとしたように、楽しそうに、あるいは何気なく話したことでも「よかったね」と心の底から相槌を打ってあげてください。
 きっと子どもの胸に響きます。
 子どもの気持ちを輝かせるなんて、とても簡単なんだなと気がつくはずです。だから「金のことば」なのです。
第6章 子どもの心に「安心を与える」14のことば
(11)「あなたは大切な子です」
  −子どもの不安を完璧に追い払うことばです
    愛情は、ことばでどんどん表現しましょう−
 このことばも平凡なことばです。
  どんな親でもわが子は大切な子なのですから、あえてことばに出さなくても心にしっかり刻まれているはずです。
 でも、そういうことばこそ惜しみなく子どもにかけてあげてください。何度も書いてきましたが親の気持ちはことばに表わして初めて、しっかりと子どもに伝わるのです。
 子どもは根本的な不安に襲われることがあります。
 学校で仲間外れにされた、勉強やスポーツに自信が持てない、自分はダメな子だと感じる、誰もわかってくれない……
 きっかけはさまざまですが、言いようのない疎外感を持つときがあります。もちろん子どもは自分の疎外感の正体をうまく説明できません。だからいっそう、不安で心細い気持ちになるのでしょう。
 そんなときにもし、お母さんが「あんたなんか」といった突き放したことばを口にすると、子どもは立ち直りのきっかけすら失ってしまいます。「もう知りません」とか「どうしようもないね」と言われたら、子どもだって「どうにでもなれ」と思ってしまいます。
 けれども「あなたは大切な子です」と両親に言われ続けた子どもは、親の愛情をいつも信じることができます。不安で心細い気持ちになっても、このひとことで踏みとどまることができます。
 自分を大切にしてくれる人がいる、自分は大切な人間なんだと思うことで、大きな安心と落ち着きを取り戻すからです。どんなピンチを迎えても、あるいは悲しいときでも淋しいときでも、自分は一人ぼっちじゃないんだと気がつくからです。
 このことばは子どもの年齢とは無関係です。幼い子でもいいし、中学生になった子どもでもいいです。むしろ傷つきやすい年齢の子どもにこそ必要かもしれません。
 わが子を決して自暴自棄にさせない、「金のことば」です。

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