立ち読み Shinkosha Book Web 新講社

それでも「人と会おう!」
横澤 彪
ISBN: 4-915872-67-X  C0095
発行年: 2001年9月25日
定価: 1,300円(税込)


  はじめに

 あなたは「人と会う」のが得意なほうですか。
 はじめてのパーティや集会にも、どんどん出ていけるし、初対面の人とも、すぐにうちとけて親密になれる。
 人見知りや、物怖じすることなどなく、どんな場でも堂々としていられる。また、そういう自分を、周りの人はいつも当然、好意を持って迎えてくれる、と信じられる。
「人と会うのが苦手? そんなことは考えたこともない」
 ──そういうタイプの人は、多分、この本を読む必要がないでしょう。
 ぼくもじつは、人から、人馴れした人、人付き合いのうまい人、あるいはパーティ馴れした人、と思われているかもしれない。
 それは仕方がない。かつての仕事がテレビ局のプロデューサーであり、今日も、芸能プロダクションの仕事をしているとなれば、いわば「人と会う」のが仕事、みたいなものだから。
 実際、われながら、よく、人と会うものだなと思う。しかも、そのうち初対面というのが毎日のように入ってくる。とにかく量も多いし、バリエーションにも富んでいる。
 これでは、「人と会う」達人と誤解してくださる方がいても不思議ではない。
 ところがぼくだって、人並みに(?)人と会うのが苦手なのだ。めんどうくさいな、と思うことだって、たびたびある。
 また、人間には人一倍関心を持っているくせに、少々、人嫌いの傾向もあるらしい。

(中略)
 
 いつも、どこかぎこちなく、自分の居場所が見つからず、内心おどおどしているような、そんな不器用なところこそが、普通の人間なのだ、と思っている。
 自分のことも、人のことも大切にしているからこそ、そうは簡単に人とうちとけられない。
 人としての誇りがあるからこそ、人の輪の中を蝶のように飛びまわることができない。
 つまり、本当に「人と会う」価値のある人ほど、「人と会う」のが不得意、ということが起きてくる。
 ぼくが仕事で接するタレントさんの中でも、トップレベルに踊り出てくる人は、舞台やブラウン管上ではともかく、実際に会うと、内気でデリケートな人が圧倒的に多い。
 過敏といってもいいほどの人見知りの強い人が、仕事となると、見違えるような思い切った演技をしたり、底ぬけのドタバタを演じるのだから、素顔を知るぼくなどは、そのギャップに驚かされたり、ほとほと感心させられたりする。
「人と会う」のが苦手と思っているとしたら、「それは、あなたの財産かもしれない」とぼくは言いたい。
 内気や人見知りは、かつては人間の美質であった。それは、その人の品の良さの表れでもあった。
 しかし今は、そんなことばかりは言っていられない。人と会い、ときには自己主張し、目の前のことを進めていかなければ生きていけなくなってきている。
 であるからこそ、内に美質をもった人が、「人と会う」ことに背を向けてしまったり、「人と会う」ことに、希望を見出せなくなってしまうのは、とても残念なことと思うのだ。
 人と会うのは、なかなかめんどうなことだ。「やっぱり会わなければよかった」ということもたしかにある。なるほど、人と会うのは、一種の「力仕事」であり、だから、一定のトレーニングも必要となってくるかもしれない。
 しかし、私たちが生きている、この世の中、すべてが「人と会う」ことから始まるのではないだろうか。
 人との出会いが、思わぬチャンスや、心に残る人生の物語をもたらせてくれるのではないだろうか。
 だからぼくは思う。そして人にも言いたい。
"それでも「人と会おう!」"──と。
 そして、「人と会う」のが苦手、と思っている、心優しい人にこそ、この本を読んでもらいたい──と心から思っている。

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