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なぜか人を「魅きつける人」 斎藤茂太 ISBN:4-915872-66-1 C0095 発行年:2001年10月1日 定価:1,300円(税込) |
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1 初心忘るべし、 どんどん更新させていこう 日常生活というのは、たいがいは同じことの繰り返しである。 毎日同じ電車に乗って、職場ではいつもと同じ人の顔に囲まれて……家庭の主婦であれば、子供を送り出して、掃除をして、スーパーへ買い物にいって……そのうちに私たちの心は、「きょうもまたきのうの繰り返し、あーあ疲れた。あーあ、やってられない」と、うんざりした気分になる。さて、どうすればいいのか。 この「うんざりした気分」を打ち払うには、「初心に帰る」のがいいのだそうだ。就職試験で、「この会社を志望する動機は?」と問われて、やる気まんまんに答えた言葉や、結婚当初の新鮮な気持ちをもう一度思い返してみようというのだ。 しかしこまったことに、私のような年齢になると、「初心」などというのは、思い返したくても覚えていないことが多い。 結婚当初に考えていたこと……はて、なんだっけ? 私も人並みに、「妻を日本一の幸せ者にしてやるぞ、ぜったいに」などと意気込んでいたのかもしれないが、そんな記憶は、いつの間にか土に埋もれてしまったようである。妻から叱られるかもしれないが、実際そうなのだから致し方ない。 さて、自己弁護するわけではないが、初心をいつまでも忘れないでいることが、そんなにいいことなのかどうか。初恋の人がほかの人と結婚して子供もいるのに、「初心忘るべからず」とばかりに思いつづけて執着するのは、不幸の始まりとなりはしないか。 こうも考えられるのではないか。きのうと同じ「初心」の「繰り返し」が、私たちの生活をマンネリにしてしまう。初心貫徹は、たしかに立派な生き方なのだろうが、人は、そうそう立派なものでもない。また「立派な生き方」が、すなわち「幸福な人生」につながるのかといえば、そういうわけでもない。 ときは移るし、状況も刻々変化する。それに合わせて人は、考え方も人生の目標も変えていく。それで、いいのではないか。 私たち夫婦も、そうやってきた。子供が生まれれば、そこに新しい「初心」が生まれる。 お互いに老後の生活になれば、またそこに新しい「初心」ができ上がる。新しい自分が生まれれば、古い自分は忘れ去られていく。 初心は貫徹するのではなく、その都度更新していくものだ。それが、いつまでも生活を新鮮に保つコツのようである。 |
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